こんにちは。Asymmetric Edge、運営者の「K」です。
チャンピオンズカップの予想をする際、多くの人がまず注目するのが「上がり最速」という指標ではないでしょうか。競馬新聞の馬柱を見ても、前走でメンバー中最速の末脚を使っている馬は、数字が赤く強調されていたりして、どうしても目に留まりますよね。直線の長い中京競馬場なら、あの豪快な追い込みが決まるはずだ、と期待してしまうのも無理はありません。
私自身、かつてはこの「上がりの速い馬」ばかりを追いかけて馬券を買っていた時期がありました。しかし、レース映像を見返すと、猛然と追い込んできているのに届かずに4着、5着で終わっていたり、逆に人気薄の先行馬が涼しい顔をして逃げ切ったりするシーンを何度も目の当たりにしました。「なぜ、一番速い脚を使っているのに勝てないのか?」その疑問が、今回この徹底的な分析を始めるきっかけとなりました。
実は、チャンピオンズカップが行われる中京ダート1800mという舞台は、単なるスピード比べの場所ではありません。そこには、コース形状による物理的な制約、砂の質によるトラックバイアス、そして騎手たちの緻密な心理戦が複雑に絡み合っています。この記事では、私が収集した過去10年の膨大なデータと、コースの特性、血統、騎手といった多角的な視点から、チャンピオンズカップにおける「上がり最速馬」の真の価値と、それを馬券に活かすための戦略を余すところなく公開します。
- チャンピオンズカップにおける過去10年の上がり最速馬の勝率と複勝率
- 中京ダート1800m特有のコース形状が追い込み馬に与える影響
- 上がり最速馬が勝ち切れない理由とトラックバイアスの関係
- 馬券戦略として上がり最速馬をどのように狙うべきかの具体的アプローチ
チャンピオンズカップで上がり最速馬は勝てるのか分析
ここでは、過去のレース結果や詳細なデータを紐解きながら、チャンピオンズカップにおける「上がり最速」という要素が、実際のレース結果とどのように相関しているのか、その実態を徹底的に解剖していきます。

過去10年の上がり最速馬の成績と傾向
まず初めに、チャンピオンズカップが阪神競馬場の「ジャパンカップダート」から名称を変え、中京競馬場へと舞台を移した2014年以降の歴史を振り返ってみましょう。この10年間のデータを精査すると、「上がり最速を記録した馬」が必ずしも勝者にはなっていないという、残酷な事実が浮かび上がってきます。
象徴的だったのは、記念すべき中京開催初年度の2014年です。このレースで上がり3ハロン最速となる35.7秒の鬼脚を使ったのはナムラビクターでした。4コーナー11番手から外を回して猛追しましたが、結果は2着。勝ったのは、道中2番手でレースを進め、上がり36.6秒(メンバー中7位)でまとめたホッコータルマエでした。0.9秒もの末脚の差がありながら、勝敗を分けたのは明らかに「位置取り」でした。
2015年も同様の傾向が見られました。上がり最速(36.4秒)をマークしたサウンドトゥルーは、最後方から追い込みましたが3着止まり。勝ったのは中団から早めに動いた牝馬サンビスタ(上がり36.8秒・4位)でした。このように、物理的に最も速いスピードでゴールに向かっている馬が、先にゴール板を駆け抜けた馬に届かないという現象が、このレースでは頻発しています。
勝った「上がり最速馬」の共通点
もちろん、上がり最速馬が勝った例もあります。2016年のサウンドトゥルー、2017年のゴールドドリーム、2021年のテーオーケインズなどがそうです。しかし、彼らの勝利には特殊な条件がありました。2016年は前半1000mが60.6秒というハイペースで前が総崩れになった展開の助けがありましたし、テーオーケインズやクリソベリル(2019年)に至っては、好位の3〜4番手につけながら上がり最速を使うという、他馬にとっては絶望的なパフォーマンスを見せました。
つまり、純粋に後方待機から直線だけで全馬を抜き去って勝った例は極めて稀であり、多くの「上がり最速馬」は、見せ場を作りながらも2着や3着、あるいは掲示板(5着以内)確保に留まっているのが現実なのです。この傾向を理解せずに、「末脚自慢」というだけで本命を打つのは、チャンピオンズカップにおいて非常にリスキーな選択と言えるでしょう。

上がり最速馬の勝率と複勝率のデータ
感覚的な話だけでなく、具体的な数値データを用いて、上がり最速馬の信頼度を客観的に評価してみましょう。過去10年のデータを集計すると、非常に興味深い統計的特徴が見えてきます。
【過去10年】上がり3F最速馬の成績データ
| 項目 | 数値(概算) | 評価 |
|---|---|---|
| 勝率 | 約50% | 一見高いが、中身に注意が必要 |
| 連対率(2着内) | 約60% | 軸馬としての信頼度はまずます |
| 複勝率(3着内) | 約70% | 馬券圏内への突入率は極めて高い |
この数字を見て、「勝率50%なら、2回に1回は勝つのだから十分ではないか?」と感じるかもしれません。しかし、ここで重要なのはその「内訳」です。先ほども触れたように、この勝利数の半分以上は、ある程度の先行力を兼ね備えた「ハイブリッド型」の馬によるものです。純粋な「追い込み一辺倒」のタイプが勝利したケースは、全体の1〜2割程度に過ぎません。
「勝てない」が「馬券にはなる」というパラドックス
一方で、注目すべきは複勝率(3着内率)の高さです。約70%という数字は、馬券戦略上、無視できない強力なデータです。これはどういうことかというと、「勝つためには前の馬を捕まえきれないが、バテた馬を交わして3着以内に滑り込む能力は非常に高い」ということを示しています。
中京ダート1800mはタフなコースであるため、先行した馬の中に、直線の坂で失速する馬が必ず何頭か出てきます。上がり最速を使える馬は、そうした脱落馬を確実に拾っていくことができるため、着順を上げやすいのです。したがって、データ的な結論としては、「上がり最速馬は単勝(1着)で狙うよりも、3連複や3連単の2・3着付け(相手候補)として狙うのが最も期待値が高い」と言うことができます。
このデータの「質」を理解しているかどうかで、予想の精度は大きく変わります。単に「速いから強い」ではなく、「速いからこそ、取りこぼしも多いが圏内には来る」という認識を持つことが、的中への第一歩となるのです。

中京ダート1800mのコース特徴と坂
なぜ、これほどまでに「上がり最速」を記録するような馬が、中京ダート1800mでは勝ちきれない現象が頻発するのでしょうか。その答えの大部分は、このコース特有の物理的な設計(トラックジオメトリ)と、そこに潜む「数字の罠」に隠されています。
専門家の間でも「JRAのダートコースの中で最もタフで、かつ紛れが生じやすい」と評されるこの舞台。単なる直線の長さや高低差データだけでは見えてこない、ランナーたちを苦しめる過酷な現実を、順を追って解剖していきましょう。
1コーナーまでの攻防が「終わりの脚」を削り取る
まず注目すべきは、ゲートが開いた瞬間の環境です。1800mのスタート地点はホームストレッチの上り坂手前に設置されており、そこから最初の1コーナーまでの距離は約300メートルしかありません。
これは何を意味するかというと、スタート直後から急激なポジション争いが勃発するということです。外枠の先行馬は、短い距離の中で内に切れ込んで位置を取らなければならず、ここで脚を使わされます。逆に、後方待機策をとる馬(後の上がり最速馬候補)は、このポジション争いに巻き込まれないように下げますが、その結果、1コーナーに入る時点で先頭集団とは物理的に大きな距離が開いてしまうのです。
スタート地点の重要性 この初期段階でのポジション取りの厳しさが、後半のスタミナ残量に直結します。「上がり最速」を出せるような馬であっても、1コーナーまでで無理をして位置を取りに行くと、肝心の勝負所でガス欠を起こすリスクが高まります。
「仮想直線」410.7メートルの欺瞞
中京のダートコースを語る上で外せないのが、約410.7メートルという直線の長さです。これは東京競馬場(約501m)に次いでJRAで2番目の長さを誇ります。多くのファンは「直線がこれだけ長ければ、多少後ろからでも届くはずだ」と考えます。
しかし、ここには大きな誤解があります。この410メートルすべてが、加速に使える「有効区間」ではないからです。
実は、直線の入り口から残り200メートル地点までの区間は、馬にとって「加速する場所」ではなく、「壁を登る場所」として機能します。つまり、スピードに乗せて気持ちよく追い込める平坦な直線は、実質的にラスト200メートル強しか残されていないのです。これを私は「仮想直線の欺瞞」と呼んでいます。数字上の長さに騙されてはいけません。
物理エネルギーを奪う「魔の急坂」のメカニズム
中京名物とも言えるこの急坂は、残り400メートル地点から残り200メートル地点にかけて待ち受けています。高低差は1.8メートル。数値だけ見ると大したことがないように思えるかもしれませんが、勾配率は約2.0%に達し、これはあの中山競馬場の直線の坂に匹敵するタフさです。
物理学的な視点でこの坂の影響を考えてみましょう。
- 平坦コースの場合: 4コーナーで加速した運動エネルギー(慣性)を利用して、その勢いのままゴールまでスピードを維持することが可能です。
- 中京の坂の場合: 重力に逆らって約500kgの馬体を持ち上げるため、強烈な追加エネルギー出力(パワー)が要求されます。
後方から一気に追い込もうとする馬は、前を行く馬との差を詰めるために、坂の手前からすでにトップスピードに近い脚を使っています。その状態でこの急勾配に突入すると、筋肉への負荷が限界を超え、坂の途中で急激に運動エネルギーを消耗してしまうのです。
ラスト200メートルの「先行馬ボーナス」
そして最も厄介なのが、この坂を登りきった後の「ラスト200メートル」です。ここは緩やかな勾配(ほぼ平坦)に戻ります。
先行馬は、坂を計算に入れてペース配分を行い、余力を残して坂を登りきります。すると、残り200メートルで再び息を入れて、平坦部分で粘り込む(再加速する)ことができるのです。これを「先行馬ボーナス」と呼びます。
一方で、坂で死力を尽くして追い上げてきた後方馬は、坂を登りきった時点で完全に脚が上がっている(バテている)ことが多く、ラスト200メートルでさらに加速する余力は残されていません。結果として、上がり3ハロンのタイムだけを見ればメンバー最速であっても、そのスピードのピークは坂の途中で終わっており、ゴール前では先行馬との差が縮まらないという現象が起きるのです。
結論:中京ダート1800mの正体
このコースは「末脚の切れ味」を競う舞台ではなく、「坂を登りきるパワー」と「坂を越えた後の持続力」を競うサバイバルコースです。だからこそ、軽い瞬発力だけの上がり最速馬は、ここでは勝てないのです。

届かない追い込み馬と展開の相関関係
コースの形状だけでなく、レースの「展開(ペース)」も上がり最速馬の運命を左右します。「届かない」という現象をより深く理解するために、追い込み馬のタイプと展開の相関関係を整理してみましょう。
一般的に、後方からレースを進める馬には「直線一気型」と「マクリ型」の2種類がいます。チャンピオンズカップにおいて、特に苦戦を強いられるのが前者の「直線一気型」です。
直線一気のリスクとマクリの有効性
| 脚質タイプ | 戦術の特徴 | 中京1800mでの成功率 | 主な該当馬と結果 |
|---|---|---|---|
| 直線一気型 | 4コーナーまで動かず、直線だけで勝負する | 低 | 2020年モズアスコット(5着) 2014年ナムラビクター(2着) |
| マクリ型 | 3〜4コーナーから外を回って進出を開始する | 中〜高 | 2018年ルヴァンスレーヴ(1着) 2021年テーオーケインズ(1着) |
「直線一気型」が成功するためには、前半のペースが極端に速くなり(ハイペース)、先行馬が総崩れになる「消耗戦」が必要です。しかし、G1レベルの先行馬や騎手は、無理なペースで飛ばすことは稀です。たいていの場合、前半1000mを61秒〜62秒程度の平均ペースで通過し、余力を残して直線に向かいます。
こうなると、物理的に「届かない」計算になります。例えば、先行馬が上がり3Fを37.0秒で走った場合、10馬身後ろにいる馬が追いつくためには、上がり35.0秒前後の脚を使わなければなりません。ダートで上がり35.0秒を切るのは至難の業であり、事実上不可能です。2023年のレモンポップが逃げ切ったレースなどは、まさに後続の馬たちに「物理的に不可能なラップタイム」を強いることで勝利しました。
一方で、「マクリ型」は、3〜4コーナーの下り坂を利用して加速し、直線を向くときにはすでに先頭集団の射程圏内(5番手前後)に取り付いています。これなら、直線の坂で多少脚色が鈍っても、惰性で粘り込むことができます。つまり、チャンピオンズカップで「上がり最速」を活かして勝つためには、直線だけの瞬発力ではなく、「コーナーで加速して位置を上げられる機動力」が不可欠だということです。

先行馬が有利なトラックバイアスの正体
さらに、このコースには「先行馬有利」を決定づけるトラックバイアス(馬場状態の偏り)が存在します。これは、ダートコース特有の「砂のキックバック」という要素と密接に関係しています。
中京のダートコースは、砂厚が9.0cm(標準)に設定されていますが、路盤の特性上、馬が蹴り上げる砂の量が多いと言われています。後方を走る馬は、前の馬が蹴り上げた大量の砂を顔や体に浴びながら走ることになります。これを嫌がる馬(砂を被るのを嫌う馬)は、進んでいこうとせず、スタミナと闘争心を削がれてしまいます。
キックバック対策のジレンマ 騎手はキックバックを避けるために、馬を外に持ち出そうとします。しかし、コーナーで外を回れば回るほど、走行距離は長くなります(距離ロス)。中京のスパイラルカーブ気味のコース形状では、外を回す距離ロスは致命的です。
ここで「先行馬の特権」が活きてきます。逃げ・先行馬は、前に馬がいないためキックバックを受けることがありません。ストレスフリーな状態で、最短距離の内ラチ沿いを走ることができます。「距離ロスなし」+「キックバックなし」という二重の恩恵を受けた先行馬に対し、「距離ロスあり」+「キックバックのストレスあり」の後方馬が、直線だけで逆転するのは容易ではありません。
チャンピオンズカップで上がり最速を記録する馬の多くは、キックバックを避けて大外を回した馬たちです。彼らは砂を被らない位置で気持ちよく走り、素晴らしい末脚を繰り出しますが、その時にはすでに内を回った先行馬がはるか前方にいる、という構図が出来上がってしまっているのです。これが、トラックバイアスの正体であり、上がり最速馬が勝ち切れない構造的な理由なのです。
チャンピオンズカップの上がり最速馬を予想する攻略法
ここまで、上がり最速馬が置かれている厳しい環境について解説してきました。しかし、だからといって「上がり最速馬は買うな」ということではありません。むしろ、この性質を逆手にとることで、高配当を狙えるチャンスが広がります。ここからは、今年のチャンピオンズカップで実際に使える、具体的な予想攻略法を伝授します。

キングカメハメハ系など注目の血統傾向
競馬において血統は、その馬が生まれ持った「能力の設計図」であり、適性を推し量るための最強のツールです。特にチャンピオンズカップが行われる中京ダート1800mという舞台は、他のダートコースとは求められる物理的スペックが異なるため、血統による選別が非常に有効に機能します。
結論から言えば、このコースで鋭い上がりを使い、かつ勝ち負けに持ち込むためには、「キングカメハメハ系」の血が絶対的なアドバンテージを持っています。なぜ、これほどまでに特定の血統が強いのか。その理由を、運動生理学的な視点も交えて深掘りしていきましょう。
「剛」ではなく「柔」:キングカメハメハ系が選ばれる理由
ダート競馬というと、どうしても「パワー」「筋肉量」「馬格」といった要素が重視されがちです。確かに、パサパサの砂を掻き込むにはパワーが必要ですが、中京の急坂を攻略し、ラストの直線で他馬を置き去りにする「キレ」を生み出すには、それだけでは足りません。
ここで重要になるのが、キングカメハメハ系が遺伝的に受け継いでいる「筋肉の柔軟性」です。
ダート血統とキンカメ系の決定的な違い
- 典型的な米国ダート血統:筋肉が硬く、収縮力が強い。スタートダッシュや一定のスピードを持続させる能力に長けているが、一瞬のギアチェンジは苦手。
- キングカメハメハ系:筋肉が柔らかく、伸縮性に富んでいる。芝並みの「バネ」を持っており、勝負所でグッと加速する(ギアを上げる)ことができる。
中京の直線にある急坂は、硬い筋肉でゴリゴリと押し通そうとすると反発を受けて消耗してしまいます。しかし、キンカメ系特有の柔軟な筋肉を持つ馬は、坂を「バネ」を使って軽やかに登坂し、登りきった後にもう一段階加速する余力を残せるのです。元芝馬のジュンライトボルトが鮮やかに差し切ったのも、この血統特性が見事にフィットした結果と言えるでしょう。
一族の支配:具体的な系統別攻略ガイド
一口に「キングカメハメハ系」と言っても、その枝葉は広がっています。チャンピオンズカップで特に注目すべきラインを整理しておきます。
- キングカメハメハ直仔:ホッコータルマエやチュウワウィザードなど、歴史的名馬を多数輩出。王道中の王道です。
- ロードカナロア産駒:短距離のイメージが強いですが、ダート中距離でも「溜めれば弾ける」タイプが出ます。ジュンライトボルトやレッドルゼル(距離不安説を跳ね返し好走)などが該当します。
- ドゥラメンテ産駒:父譲りの荒々しい気性と爆発的な末脚が武器。アイコンテーラーなどが好走していますが、ハマった時の破壊力は随一です。
- ルーラーシップ産駒:ストライドが大きく、長くいい脚を使います。不器用な馬も多いですが、中京の広いコースは合っています。
また、テーオーケインズのように、父が米国型のシニスターミニスターであっても、母系や走りのフォームにキングカメハメハ的な要素(母父マンハッタンカフェなどサンデー系の柔らかさ)を取り込んでいる馬は、中京でのパフォーマンスが跳ね上がる傾向にあります。
米国型血統との「役割分担」を理解する
一方で、レモンポップの父Lemon Drop Kidのような、いわゆる「米国型(A.P. Indy系やStorm Cat系)」の血統はどう評価すべきでしょうか。
彼らは「上がり最速で差す」というよりも、「先行して粘り込む」競馬で真価を発揮します。中京において、キンカメ系が「刀」だとしたら、米国型は「ハンマー」です。
| 血統タイプ | 得意な勝ちパターン | 上がりの質 | 狙い方 |
|---|---|---|---|
| キングカメハメハ系 | 好位・中団からの差し | 瞬発力型(加速が速い) | 軸馬・連対候補 |
| 米国型(A.P. Indy等) | 逃げ・先行押し切り | 持続力型(バテない) | 展開有利な時の頭・2着 |
| ゴールドアリュール系 | 消耗戦での浮上 | スタミナ型(他馬が止まる) | ハイペース時の穴 |
ゴールドアリュール系の「相対的な最速」
忘れてはならないのが、サンデーサイレンス系最強のダート種牡馬、ゴールドアリュールの系統です。ゴールドドリームやクリソベリルがこの代表格です。
彼らの武器は、無尽蔵とも言える「スタミナ」です。キングカメハメハ系が「自ら加速して」上がり最速を出すのに対し、ゴールドアリュール系は「他馬が坂で失速する中で、自分だけペースを落とさずに走り続ける」ことで、結果的に上がり最速を記録します。これを私は「相対的な最速」と呼んでいます。
したがって、予想をする際は、レースがスローの瞬発力勝負になりそうなら「キングカメハメハ系」、ハイペースの消耗戦になりそうなら「ゴールドアリュール系」を重視するという使い分けが、的中への近道となります。

ルメール騎手ら名手の騎乗と上がり時計
「馬7:人3」と言われる競馬ですが、ことチャンピオンズカップの上がり3ハロンに関しては、騎手の技術がタイムに与える影響は甚大です。特に注意しなければならないのが、C.ルメール騎手の存在です。
ルメール騎手の中京ダート1800mにおける成績は群を抜いています。彼の手綱捌きの最大の特徴は、「道中のエネルギーロスを極限まで抑える」ことにあります。馬と喧嘩せず、リズム良く走らせることで、直線を向くまでに馬の体力を温存させます。その結果、馬は余力を持った状態で坂に挑むことができ、限界に近い上がりタイムを叩き出すことができるのです。
騎手別・狙い方のポイント
- C.ルメール騎手:人気馬に乗ることが多いが、確実に速い上がりを使ってくる。軸として信頼できる。
- M.デムーロ騎手:「出遅れからの後方一気」を得意とする。展開がハマれば頭まであるが、不発なら惨敗も。穴馬での一発狙いに最適。
- 川田将雅騎手:上がり最速を狙うよりも「勝てるポジション」を取りに行く。結果的に上がりが速くなることはあるが、無理な追い込みはしない。堅実な軸候補。
- R.ムーア騎手など短期免許外国人:コースロスを嫌い、馬群を割って伸びてくる(イン突き)。これが決まると、データ以上の上がりタイムが出ることがある。
騎手の手腕によって、馬の本来の能力以上の上がり時計が記録されることがあります。「この馬は前走上がり38秒台だったから切ろう」と判断する前に、「今回は誰が乗るのか?」を確認することが重要です。

JBCなど前哨戦から見る脚色の見極め
チャンピオンズカップに出走する馬は、様々な前哨戦を経てここに集結します。各馬が経てきたローテーションによって、今回発揮できるパフォーマンスや「上がりの質」を推測することができます。
主要な前哨戦である「JBCクラシック(主に2000m)」と「武蔵野ステークス(東京1600m)」を比較してみましょう。
距離延長組と短縮組の違い
JBCクラシック組は、地方競馬の深い砂やタフな2000m戦を経験してきています。彼らはスタミナが豊富で、道中のペースが厳しくなった時に強さを発揮します。上がりタイム自体は派手ではないかもしれませんが、バテない強みがあります。
一方、武蔵野ステークス組は、スピード優先のマイル戦を戦ってきています。レモンポップなどが良い例ですが、彼らは絶対的なスピード値が高く、35秒台の鋭い上がりを使う能力を持っています。しかし、課題は「距離延長」と「坂」です。東京のマイルなら押し切れても、中京の1800mではラスト1ハロンで甘くなる可能性があります。前走で上がり最速を出していても、それが「余裕のある最速」だったのか、「一杯いっぱいの最速」だったのかをレース映像で確認する必要があります。

馬券で狙うべき上がり最速の穴馬候補
データ分析の章で、「上がり最速馬は複勝率が高い」と述べました。これを馬券戦略に落とし込むなら、狙うべきは「人気薄の追い込み馬」です。
多くの競馬ファンは、勝ちそうな馬(先行馬や実績馬)の馬券を買います。そのため、近走で勝ち切れていない、あるいは後ろから行くだけの不器用な馬は、オッズ妙味が出やすくなります。しかし、チャンピオンズカップでは、そういった馬が無欲の追い込みで3着に突っ込んでくるパターンが非常に多いのです。
穴馬探しのチェックリスト
- 近3走以内で、上がり3位以内の末脚を使ったことがあるか?
- 前走は展開不向き(スローペースなど)で脚を余して負けたのではないか?
- 今回、距離短縮やコース替わりで条件が好転するか?
- 騎手が「一発狙い」のタイプに乗り替わっていないか?
例えば、2018年のウェスタールンド(単勝8番人気・2着)や、2015年のサウンドトゥルー(単勝5番人気・3着)などは、まさにこの条件に当てはまる馬たちでした。彼らを3連系のヒモに加えるだけで、配当は跳ね上がります。

軸馬と相手選びに役立つ展開予想のコツ
「上がり最速馬が届くのか、届かないのか?」
この問いに対する答えは、神のみぞ知る運命ではありません。出走メンバーの並びと心理を読み解くことで、論理的に導き出すことができるパズルです。ここからは、私が普段実践している「展開シミュレーション」の具体的な手順と、データの見方を誤らないための重要概念について解説します。
逃げ馬の「数」で決まる3つのシナリオ
展開を読む上で最初に見るべきは、「誰が逃げるか」ではなく「逃げたい馬が何頭いるか」です。この数によって、上がり最速馬の信頼度(期待値)は劇的に変化します。
| シナリオ | 状況 | ペース予測 | 上がり最速馬の扱い |
|---|---|---|---|
| 単騎逃げ濃厚 (1頭のみ) | 強力な逃げ馬が内枠に入り、競りかける馬が不在。 | スロー〜平均 (前残り) | 【危険】 物理的に届かない可能性大。3着ヒモまで評価を下げる。 |
| 一騎打ち (2頭) | 逃げ馬が2頭いるが、お互いを知り尽くしている場合。 | 平均 (地力勝負) | 【相手候補】 隊列がすぐに決まれば落ち着く。軸は好位組、相手に追い込み馬。 |
| 激流・消耗戦 (3頭以上) | 逃げ馬多数、あるいは「外枠の逃げ馬」が強引に行く場合。 | ハイペース (前崩れ) | 【主役】 前の馬が坂で止まる。ここで初めて「差し切り勝ち」が現実味を帯びる。 |
特に注意が必要なのは、逃げ馬が1頭しかおらず、しかもその馬が内枠(1〜4番)に入った場合です。このケースでは、スタートしてすぐにラチ沿いの先頭ポジションを確保できるため、道中で息を入れる余裕が生まれます。こうなると、後半の「上がり3ハロン」勝負になっても逃げ馬がバテず、後ろから35秒台の脚を使っても追いつけないという「行った行った」の展開になります。
「ポジション補正済み上がり」という思考法
もう一つ、皆さんにどうしても伝えておきたい概念があります。それは「ポジション補正済み上がり(Position Adjusted Agari)」です。
多くの人は、競馬新聞の「上がり3Fタイム」の数字だけを比較して、「A馬は35.8秒、B馬は36.5秒。だからA馬の方が末脚が鋭い」と判断しがちです。しかし、中京ダート1800mにおいて、この比較は致命的なミスを招くことがあります。
分かりやすい例として、2014年のレース結果を分析してみましょう。
- 1着 ホッコータルマエ:上がり36.6秒(道中2番手)
- 2着 ナムラビクター:上がり35.7秒(道中11番手)
ナムラビクターは、ホッコータルマエよりも0.9秒も速い上がりを使っています。距離にして約5〜6馬身分ものスピード差です。しかし、結果はホッコータルマエの勝利でした。なぜなら、4コーナーの時点でホッコータルマエは先頭、ナムラビクターはそこから遥か後方にいたからです。
中京のようなタフなコースでは、物理的に縮められるタイム差に限界があります。私の経験則では、良馬場のダート1800mにおいて、ラスト600mだけで「1.0秒以上の差」を逆転するのはほぼ不可能です。
真の評価基準
「誰が一番速い上がりを出せるか」を探すのではなく、「現実的なポジション(5〜8番手以内)から、36秒台前半の脚を使える馬は誰か」を探してください。それが、このレースの勝者を見つける最短ルートです。
決定版:購入前の最終チェックリスト
最後に、馬券を購入する直前に確認すべきチェックリストを用意しました。軸馬と相手馬(ヒモ)の選定に迷った際、この基準に立ち返ってみてください。
Asymmetric Edge流 展開ジャッジメント
- 逃げ馬カウント:メンバーを見渡し、何が何でも逃げたい馬は何頭いるか? → 1頭なら「前」重視、3頭以上なら「後ろ」重視。
- 枠順の並び:先行馬が外枠に固まっていないか? → 外の先行馬は内に切れ込むためにペースを上げる必要があるため、ハイペースの要因となる。
- 軸馬の選定:その馬は、スタートで出遅れる癖がないか? → どんなに末脚がすごくても、出遅れ癖のある馬を中京1800mで軸にするのはリスクが高すぎる。
- 相手(ヒモ)の選定:「展開がハマれば飛んでくる」無欲の追い込み馬はいるか? → 勝率は度外視して、3連系の3列目にマークしておく。

チャンピオンズカップは上がり最速馬を紐で狙え
長くなりましたが、チャンピオンズカップにおける「上がり最速」攻略の結論をまとめます。
- 単勝(1着狙い):「上がり最速」だけのデータで本命にするのは危険。勝つためには「ある程度のポジション(10番手以内)」を取れる先行力や機動力が必須。
- 連系(2・3着狙い):ここが「上がり最速馬」の主戦場。勝ち切る力はなくても、展開次第で馬券圏内に飛び込んでくる確率は高い。人気薄でもヒモとして積極的にマークする。
- 買い目のイメージ: 【軸】好位から36秒台前半で上がれる安定感のある馬(キンカメ系など) 【相手】後方から35秒台の脚を使える爆発力のある馬(一発狙いの騎手など)
チャンピオンズカップは、データと物理法則、そして騎手の駆け引きが交錯する非常に奥深いレースです。「誰が一番速い上がりを使うか」を予想するだけでなく、「その脚が果たして届く展開になるのか」まで想像を膨らませることで、的中の確率は格段に上がります。
ぜひ、今年のチャンピオンズカップでは、表面的なタイムだけでなく、その裏にあるストーリーを読み解いて、会心の的中を掴み取ってください。私のこの分析が、あなたの予想の一助となれば幸いです。
※本記事の情報は執筆時点のデータに基づいています。競馬に絶対はありませんので、最終的な馬券購入はご自身の判断でお願いいたします。正確な出走馬やオッズなどの情報はJRA公式サイトをご確認ください。
