競走馬の時速は何キロ?最高速度や歴代最強馬まで徹底解説

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「競走馬はいったい時速何キロで走るんだろう?」競馬を見ていると、その圧倒的なスピードに誰もが驚かされます。競走馬の時速はもちろん、馬の速度の平均や、馬が何キロで走るのかという基本的な疑問から、歴代最速馬が叩き出した競馬の最高速度、さらには馬の最高速度に関するギネス記録まで、気になる点は多いでしょう。また、競馬の最速タイムを巡る競走馬の最高速度ランキングや、ディープインパクト、サイレンススズカ、カルストンライトオ、そしてドウデュースといった名馬たちの最高速度にも興味が尽きません。一方で、馬は全力で走ると死んでしまうという衝撃的な話や、馬の速度が長距離でどう変わるのか、競馬の馬のスピードの限界についても知りたいところです。この記事では、これらの疑問に全てお答えします。

この記事でわかること

  • 競走馬の平均速度と世界記録を含む最高速度
  • 歴代の名馬たちが記録した驚異的なスピード
  • 馬が全力で走るときの身体的な限界とその理由
  • 競馬のタイムに影響を与える様々な要因
目次

競走馬は時速何キロ?そのスピードの基礎知識

  • そもそも馬は何キロで走る動物?
  • 知っておきたい馬の速度の平均
  • 競馬の馬のスピードは桁違い
  • 馬の最高速度はギネス記録にも
  • 馬は全力で走ると死んでしまうのか

そもそも馬は何キロで走る動物?

競走馬の速さを知る前に、まずは一般的な馬がどのくらいの速度で走るのかを見てみましょう。馬の走り方には、大きく分けて4つの種類があり、それぞれ速度が異なります。

走り方(歩様)速度の目安(時速)特徴
常歩(なみあし)約6〜8km人間が歩くくらいの速さ。4本の脚を一本ずつ順番に動かす。
速歩(はやあし)約15〜20km自転車くらいの速さ。対角線上にある2本の脚を同時に動かす。
駈歩(かけあし)約20〜30km一般的な馬が走るときの走り方。3本の脚が同時に地面から離れる瞬間がある。
襲歩(しゅうほ)約60km以上競馬で見られる全力疾走。4本の脚が全て地面から離れる空中浮遊の瞬間がある。

このように、馬は状況に応じて走り方を使い分けています。乗馬体験などで触れ合う馬の多くは駈歩までの速度で走りますが、競走馬がレースで見せるのは「襲歩」と呼ばれる最速の走り方なのです。

知っておきたい馬の速度の平均

では、競走馬を含む馬全体の「平均速度」はどのくらいなのでしょうか。前述の通り、走り方によって速度は大きく変わるため、一概に平均を出すのは難しい側面があります。

ただ、一般的な馬が移動する際の平均的な速度としては、速歩や駈歩が中心となるため、時速15kmから30km程度がひとつの目安と言えるでしょう。これは、あくまで一般的な馬の場合です。

一方で、競馬の主役であるサラブレッド種の平均速度は、これを遥かに上回ります。レース中のサラブレッドは、常に時速60km前後という、自動車に匹敵するスピードで走り続けます。人間の一流スプリンターが時速約36km、陸上最速の動物チーターが時速約110kmで走ることを考えると、馬、特にサラブレッドがいかに速い動物であるかがわかります。

時速60kmで走り続けるなんて、驚異的なスタミナですね!

競馬の馬のスピードは桁違い

なぜ、競馬で走るサラブレッドはこれほどまでに速いのでしょうか。その理由は、「速く走るため」だけに品種改良が重ねられてきた歴史にあります。

サラブレッドは、スピードに優れるアラブ馬やハンター馬などを交配させ、長い年月をかけて生み出された「走る芸術品」です。その身体は、速く走るための機能美に満ちています。

速さの秘密は身体の構造にあり

  • 大きな心臓と肺
    サラブレッドは体重約500kgに対して、心臓の重さが約4kgにも達します。これは人間の約16倍の大きさで、一度に大量の血液を全身に送り出し、筋肉に酸素を供給できます。
  • 効率的な呼吸法
    馬は襲歩で走るとき、1完歩(ストライド)で1回の呼吸を行います。これを「走行呼吸連動」と呼び、呼吸と走るリズムを同調させることで、酸素の取り込みを最大化しているのです。
  • 無駄のない筋肉と強靭な腱
    しなやかで伸縮性に富んだ筋肉と、バネの役割を果たす強靭な腱が、爆発的な推進力を生み出します。

このように、サラブレッドは他の馬とは一線を画す、スピードに特化した身体構造を持っているため、桁違いのスピードを発揮できるのです。

馬の最高速度はギネス記録にも

競走馬のトップスピードは、時に時速70kmを超えることがあります。そして、馬の最高速度はギネス世界記録にも認定されています。

現在、ギネスワールドレコーズに「馬の最高速度(Fastest speed for a race horse)」として登録されているのは、2008年にアメリカで記録されたものです。

馬の最高速度ギネス記録

記録された馬:ウイニングブリュー(Winning Brew)
記録:時速70.76km(44.0mph)
計測距離:2ハロン(約402m)

この記録は、サラブレッドによるものです。しかし、世界にはさらに速い馬が存在します。それは、アメリカンクォーターホースという品種です。

彼らは、その名の通りクォーターマイル(約400m)のレースで無類の強さを発揮する短距離専門の馬で、非公式ながら最高時速は88kmに達したという記録もあります。サラブレッドが中長距離を得意とするステイヤータイプだとすれば、アメリカンクォーターホースは純粋なスプリンターと言えるでしょう。

馬は全力で走ると死んでしまうのか

「馬は全力で走ると死んでしまう」という、少しショッキングな話を聞いたことがあるかもしれません。これは、残念ながら単なる噂ではなく、実際に起こりうることです。

競走馬は、自らの限界を超えるほどの高い闘争心を持っています。そのため、レース中に身体が悲鳴を上げていても、走り続けてしまうことがあります。その結果、悲劇的な事故につながるケースは少なくありません。

全力疾走が引き起こす主な故障

運動誘発性肺出血(EIPH)
あまりにも激しい運動によって肺の毛細血管が破れ、出血する症状です。多くの競走馬が経験すると言われており、重症化すると鼻から出血(鼻出血)し、競走能力に大きな影響を与えます。

骨折
時速60km以上で走る馬の1本の脚には、数トンもの負荷がかかります。レース中のわずかなバランスの乱れや、金属疲労のようにダメージが蓄積することで、走行中に骨折してしまうことがあります。これは競走馬にとって最も重い故障の一つです。

心不全・心臓発作
極度の興奮と身体的負荷により、心臓が限界を迎え、突然死に至るケースもあります。

サラブレッドは、人間の手によって「より速く」を追求された結果、非常に繊細で脆い側面も持つようになりました。彼らが見せる輝かしい走りは、常にこうしたリスクと隣り合わせなのです。

競走馬の時速何キロという記録を名馬と共に解説

  • 競走馬の最高速度をランキング形式で
  • 歴代最速馬カルストンライトオの最高速度
  • 異次元の逃亡者サイレンススズカの最高速度
  • 英雄ディープインパクトの最高速度
  • 馬の速度は長距離でどう変わる?

競走馬の最高速度をランキング形式で

競走馬の「最速」を一口に語るのは、実は非常に難しいものです。なぜなら、速さの質は距離やレース展開によって全く異なる意味を持つからです。短距離での一瞬のスピード、長距離を走り切る持続力、そしてゴール前の爆発的な瞬発力。これらは全て異なる能力と言えます。

そこでこのセクションでは、「最速」というテーマをより深く理解するために、以下の3つの異なる視点から、歴史に名を刻んだ名馬たちをランキング形式でご紹介します。

3つの「最速」ランキング

  1. 持続的な速さの証! JRAコースレコード・ランキング
  2. 究極の切れ味! 上がり3ハロン・ランキング
  3. まさに弾丸! 瞬間最高速度(1ハロン)・ランキング

これらのランキングを見ることで、競走馬の持つ多様な「速さ」の本質に迫ることができるでしょう。

持続的な速さの証!JRAコースレコード・ランキング

まずご紹介するのは、そのコース・距離を史上最も速いタイムで走破した証であるJRAコースレコードです。これは、スピードとスタミナを高次元で両立させた、持続的な速さを持つ馬だけが達成できる偉大な記録と言えます。

まさに、その距離における「絶対王者」の証明ですね!

ここでは、主要なレースで樹立された、今なお語り継がれるレコードタイムを見ていきましょう。

距離競馬場タイム記録した馬特記事項
芝1200m中山1:06.7ロードカナロア2012年 スプリンターズSにて。世界の短距離界を席巻した絶対王者が、引退レースで樹立した金字塔。
芝1600m東京1:30.9ノームコア2019年 ヴィクトリアマイルにて。高速馬場を味方につけ、驚異的なタイムでマイル女王に輝きました。
芝2000m東京1:55.2イクイノックス2023年 天皇賞(秋)にて。「史上最強」の呼び声高い名馬が、後続を全く寄せ付けずに記録した異次元のレコード。
芝2400m東京2:20.6アーモンドアイ2018年 ジャパンカップにて。これは当時の世界レコードでもあり、日本競馬史上に燦然と輝く大記録です。
芝3200m京都3:12.5キタサンブラック2017年 天皇賞(春)にて。長距離界の王者として君臨し、多くのファンに愛された名馬が刻んだ不滅のレコード。

これらの記録は、単に馬の能力だけで達成できるものではありません。高速決着になりやすい馬場状態、レース全体のペース、そして騎手の完璧な騎乗など、全ての条件が揃ったときに初めて生まれる奇跡的なタイムなのです。

究極の切れ味!上がり3ハロン・ランキング

次にご紹介するのは、レース終盤の「上がり3ハロン」、つまりゴール手前600mのタイムに基づいたランキングです。これは、馬の瞬発力、いわゆる「切れ味」を測る上で最も重要な指標となります。どれだけ速くトップスピードに到達し、それを維持できるかが問われます。

「上がり3ハロン」とは?
競馬では200mを1ハロンと呼びます。上がり3ハロンは、ゴールまでの最後の3ハロン(600m)の所要タイムのことです。一般的に、33秒台なら超一流、32秒台に突入すると歴史的な末脚(すえあし)と評価されます。

スタミナを消耗したレース終盤で、信じられないほどのスピードを発揮した名馬たちを見てみましょう。

上がり3F記録した馬レース名特記事項
32.5秒ドウデュース2023年 有馬記念G1を勝利した馬としては観測史上最速。中山競馬場の急坂をものともしない、まさに究極の末脚でした。
32.7秒キズナ2013年 日本ダービー8万人を超える大観衆の前で、後方から全馬をごぼう抜きにしたダービー史上最速の上がり。
32.8秒ジェンティルドンナ2012年 桜花賞絶望的な位置から一頭だけ次元の違う脚で追い込み、牝馬三冠の第一歩を記した伝説のレース。

前述のディープインパクトが菊花賞(3000m)で見せた33.3秒という上がりも、長距離を走った後であることを考えれば、これらの記録に匹敵する、あるいはそれ以上に価値のあるものと言えるかもしれません。この上がりタイムこそ、競馬のクライマックスを彩る最大の魅力なのです。

まさに弾丸!瞬間最高速度(1ハロン)・ランキング

最後は、レースの中のわずか200m(1ハロン)だけを切り取った、純粋なトップスピードを示す「瞬間最高速度」のランキングです。これは、馬自身のスプリント能力の限界値を表す指標と言えるでしょう。

驚異的なスピードで駆け抜けた、まさに「弾丸」と呼ぶにふさわしい記録をご覧ください。

1ハロン記録した馬レース名時速換算
9.6秒カルストンライトオ2002年 アイビスSD時速75.0km
9.8秒アグネスワールド2000年 高松宮記念時速73.5km
9.9秒グランアレグリア2020年 高松宮記念時速72.7km

注意点:この記録の価値
この1ハロンラップは、下り坂や風向き、レース展開など様々な要因に影響されるため、単純な横比較が難しい側面もあります。しかし、カルストンライトオの9.6秒は、現在でも破られていないJRA史上最速の公式ラップとして、その価値が認められています。

このように、「最速」という言葉一つをとっても、持続力、瞬発力、そして絶対的なスピードという多様な側面から競走馬の能力を評価することができます。それぞれのランキングに名を連ねる馬たちは、みな歴史に残る名馬ばかりなのです。

歴代最速馬カルストンライトオの最高速度

「日本競馬史上、最も瞬間的なスピードが速かった馬は?」
この問いに対して、多くの競馬ファンは迷わず一頭の馬の名前を挙げるでしょう。その名はカルストンライトオ。「韋駄天」「電撃のスプリンター」など、数々の異名を持つ彼は、純粋なトップスピード、その一点において歴代最強との呼び声が高い伝説の馬です。

彼の真骨頂は、ゴールまでのタイムではなく、レース中のほんの一瞬で見せる、他の馬では到達不可能な速度域にありました。特に、彼の伝説が確立されたのが、2002年に新潟競馬場で行われたサマースプリントシリーズの一戦、アイビスサマーダッシュ(G3・直線1000m)です。

伝説と化した「1ハロン9.6秒」の衝撃

アイビスサマーダッシュは、日本中央競馬(JRA)で唯一、スタートからゴールまで一切カーブのない直線コースで行われる特殊なレースです。この舞台が、カルストンライトオというスプリンターの能力を最大限に解放しました。

彼はスタートから猛然とダッシュし、先頭に立つとぐんぐん後続を突き放していきます。そして、伝説の瞬間はレース中盤、スタートから600mを過ぎた地点で訪れました。

JRA史上最速ラップ:1ハロン(200m)9.6秒

このレースの600mから800mの区間で、カルストンライトオは「9.6秒」という驚異的なラップタイムを記録しました。これは現在に至るまで破られていない、JRAの公式レースにおける史上最速の1ハロンラップとして、不滅の記録となっています。

この速さを時速に換算すると、時速75.0kmにも達します。これは高速道路を走る自動車に匹敵するスピードであり、500kg近い馬体がこの速度でターフを駆け抜けていたと考えると、まさに弾丸のようであったことが想像できるでしょう。

100mを4.8秒で走る計算ですね…。もはや想像を絶するスピードです。

なぜカルストンライトオは音速の領域に達したのか?

では、なぜ彼はこれほどまでの絶対的なスピードを発揮できたのでしょうか。その秘密は、彼の血統、独特の走法、そしてコースとの相性に隠されています。

  • 血統的背景:父は欧州の短距離G1で活躍したウォーニング。父から受け継いだ、爆発的なスピード能力が彼の最大の武器でした。
  • 独特の走法:彼は前脚を高く上げて地面を力強く叩きつける、回転の速い「ピッチ走法」で走ります。この走法が、類まれな加速力とトップスピードを生み出す原動力となっていたのです。
  • コースとの相性:カーブを苦手としていた彼にとって、自分のスピードだけを頼りに走れる新潟の直線1000mは、まさに天賦の才を最大限に発揮できる最高の舞台でした。

これらの要素が奇跡的に組み合わさった結果、あの伝説的な記録が生まれたと言えます。

記録だけではない、G1制覇という証明

カルストンライトオは、単なる「記録を持つ馬」ではありませんでした。そのキャリアのハイライトは、2004年のスプリンターズステークス(G1)制覇です。

このレースでも彼は持ち前のスピードを存分に発揮し、当時の最強スプリンターたちを相手に堂々と逃げ切り勝ちを収め、ついに短距離界の頂点に立ちました。これにより、彼の速さがG1レースでも通用する本物であることを完全に証明したのです。

絶対スピードゆえの脆さ
一方で、彼のキャリアは常に順風満帆だったわけではありません。その極端なまでのスピード能力は、裏を返せば非常に繊細で、レース展開や馬場状態に大きく左右される「脆さ」も同居していました。そのため、好不調の波が激しい競走生活であったことも事実です。

絶対的なトップスピードという点において、カルストンライトオは間違いなく歴代最速馬の一頭です。彼の「9.6秒」という記録は、単なる数字としてだけでなく、見る者すべての度肝を抜いた衝撃的な走りとして、これからも長く語り継がれていくことでしょう。

異次元の逃亡者サイレンススズカの最高速度

前述のカルストンライトオが「瞬間最大風速」ならば、サイレンススズカの速さは「持続可能な最高速度」と表現するのが最もふさわしいでしょう。彼の凄さは、常識外れのハイペースを、まるで普通のペースであるかのように維持したまま最後まで走り続ける、異次元の能力にありました。

彼はただ速いだけでなく、その圧倒的なスピードでレースそのものを支配し、見る者すべての心を鷲掴みにした、競馬史上に残るカリスマです。「異次元の逃亡者」と呼ばれた彼の走りは、今なお伝説として語り継がれています。

常識を破壊した「大逃げ」という芸術

彼の代名詞である「大逃げ」。これは、スタート直後から猛然と加速して後続を大きく突き放し、そのままゴールまで誰にも影を踏ませずに逃げ切るという、極めてシンプルな戦法です。しかし、これは競馬のセオリーに反する、非常にリスクの高い戦法でもあります。

「大逃げ」はなぜ無謀なのか?
通常、レース序盤で体力を使いすぎると、ゴール前の最も苦しいところでスタミナが尽き、後続の馬たちに一気に交わされてしまいます。そのため、騎手は馬の能力を考え、巧みにペース配分を行うのが常識です。

しかし、サイレンススズカはこの常識を根底から覆しました。彼の驚異的な心肺機能と、どこまでも走り続けられるかのようなスピード持続力は、後続の馬たちが「追いかける気力すら失う」ほどの領域に達していたのです。彼にとってハイペースは、体力を消耗する無謀な賭けではなく、最も能力を発揮できる自然な走り方でした。

伝説の序章となった1998年・金鯱賞

彼の「大逃げ」スタイルが完成し、その恐ろしさを世に知らしめたのが、1998年5月に行われた金鯱賞(G2)です。このレースで彼は、スタートから楽々と先頭に立つと、2番手の馬に10馬身(約24m)以上の大差をつけて逃げ続けます。

圧巻だったのは、最後の直線です。普通なら苦しくなる場面で、鞍上の武豊騎手が後続との差を確認し、軽く手綱を緩めて流しているにもかかわらず、サイレンススズカと後続の差は一向に縮まりませんでした。結果は2着に1.8秒差をつける圧勝。これは距離に換算すると約11馬身もの差であり、G2レースでは考えられないほどの歴史的な大差勝ちでした。

ゴール前で流しているのに差が縮まらないなんて…。後続の馬は絶望的な気持ちだったでしょうね。

最強メンバーを置き去りにした毎日王冠

そして、彼のキャリアで最も伝説的なレースとして語り継がれるのが、同年10月の毎日王冠(G2)です。このレースには、後に凱旋門賞で2着に入るエルコンドルパサー、そしてグランプリを連覇するグラスワンダーという、2頭の無敗の外国産馬が出走していました。まさに、歴史的名馬が集結した一戦でした。

その最強メンバーを相手にしても、サイレンススズカの走りは全く揺るぎません。彼はいつも通りスタートから先頭に立ち、信じられないペースでレースを引っ張ります。その最初の1000m通過タイムは「57.7秒」。これは1600mのG1レースでも非常に速いペースであり、1800mのレースでは通常ありえない、まさに異次元のラップタイムでした。

結果、彼は最強の挑戦者たちを全く寄せ付けずに完勝。この勝利により、彼は誰もが認める現役最強馬としての地位を不動のものとしたのです。

夢の続き、そして「沈黙の日曜日」

毎日王冠を圧勝し、誰もが彼の時代の到来を確信して迎えたのが、1998年11月1日、東京競馬場で行われた天皇賞(秋)(G1)でした。単勝支持率1.2倍という圧倒的な1番人気に推された彼は、スタートからいつも通り先頭に立ち、後続をぐんぐん引き離します。

そのペースは毎日王冠をさらに上回るもので、最初の1000mを57.4秒で通過。誰もが彼の圧勝を信じて疑わなかった4コーナー手前、悲劇は起こりました。走行中に突如バランスを崩し、競走を中止。診断結果は、左前脚手根骨粉砕骨折という、競走能力を完全に喪失する致命的な故障でした。

実況アナウンサーが残した言葉
この時、関西テレビの杉本清アナウンサーが絞り出した「沈黙の日曜日」という言葉は、当時の競馬場を包んだ悲しみと衝撃を象徴する名実況として、今もなお語り継がれています。

サイレンススズカの速さは、常に限界と隣り合わせの、刹那的な輝きでした。彼の競走生活は、最も輝いていた瞬間にあまりにも突然終わりを告げましたが、その異次元の走りは記録以上にファンの「記憶」に深く刻み込まれています。

英雄ディープインパクトの最高速度

日本競馬の歴史を語る上で、ディープインパクトの存在を抜きに語ることはできません。彼は単なる強い馬ではなく、社会現象を巻き起こした「英雄」であり、競馬の常識そのものを変えた時代の寵児でした。彼の「速さ」は、これまで紹介した2頭とはまた違う次元、すなわち他馬との相対的な速度差を極限まで広げる異次元の瞬発力にありました。

彼の最大の武器は、レース終盤で見せる爆発的な加速力、いわゆる「末脚(すえあし)」です。ゴール前の直線で彼が見せる走りは、多くのファンや関係者から「飛んでいる」と形容されるほど、他の17頭がまるで止まって見えるかのような衝撃的なものでした。

なぜ彼の走りは「飛ぶ」と形容されたのか

ディープインパクトの走りが「飛ぶ」とまで言われたのには、明確な理由があります。それは、彼の類まれな身体能力と、それを最大限に活かす走法にありました。

  • 驚異的な柔軟性と心肺機能:全身をバネのように使ったしなやかな走りを可能にし、レース終盤でも衰えないスタミナを供給しました。
  • 非常に深いストライド:一完歩で進む距離が非常に大きく、少ない歩数で他馬との差を詰めることができました。
  • 低い重心と地面との短い接地時間:まるで地面を滑るかのように、ほとんど音を立てずに走ったと言われています。これにより、エネルギーロスを最小限に抑え、爆発的な加速に繋げたのです。

主戦騎手を務めた武豊騎手は、彼の背中を「まるで翼が生えているようだった」と語っています。まさに人馬一体でターフを飛翔していたのですね。

伝説の幕開けとなった「ワープ」

彼の異次元の瞬発力が初めて世に知れ渡ったのが、クラシック三冠レースの第一弾、2005年の皐月賞(G1)です。最後の第4コーナーを回ったとき、ディープインパクトはまだ後方から数えたほうが早い絶望的な位置にいました。誰もが勝利は不可能だと感じたその瞬間、彼は馬群の間を縫うように、まるでワープしたかのような加速で突き抜け、先頭の馬をあっさりと抜き去り勝利しました。この衝撃的なレースは、これから始まる伝説の幕開けにふさわしいものでした。

無敗の三冠達成、菊花賞での衝撃

彼の真骨頂が最も分かりやすく示されたのが、無敗の三冠達成がかかった2005年の菊花賞(G1)です。舞台は3000mという、スタミナが徹底的に問われる長距離レース。道中は後方でじっくりと脚を溜め、最後の直線だけで勝負を決めました。

長距離の常識を覆した上がり33.3秒

このレースでディープインパクトが記録した最後の600m(上がり3ハロン)のタイムは「33.3秒」でした。3000mという過酷な距離を走り切った直後とは思えない、まるで短距離レースのようなこのタイムは、スタミナとスピードは両立しないという競馬界の常識を完全に覆す、驚異的な記録です。

この勝利により、彼は日本競馬史上2頭目となる、無敗でのクラシック三冠という偉業を達成しました。

最強の証明、そして有終の美へ

ディープインパクトの強さは、キャリアを通じて揺らぐことはありませんでした。翌年の天皇賞(春)(G1)では、菊花賞を上回る3200mの距離で、当時の世界レコードを更新して圧勝。そして、引退レースとなった2006年の有馬記念(G1)では、ファン投票1位の期待に応え、ライバルたちを全く寄せ付けない走りで有終の美を飾りました。

種牡馬としての偉大な功績
引退後、彼は種牡馬(しゅぼば)としても歴史的な成功を収めました。彼の子どもたちから、数えきれないほどのG1馬が誕生し、日本の競馬界のレベルを飛躍的に向上させました。彼の伝説は、今もなお産駒たちによって受け継がれています。

彼の走りは、最高速度という単純な数字で測れるものではありませんでした。「どれだけ速いトップスピードを、レースのどのタイミングで、どれだけ持続できるか」という点において、他の追随を許さない絶対的な能力を持っていたのです。その衝撃的な走りは、タイムという記録以上に、多くのファンの記憶に深く刻み込まれています。

馬の速度は長距離でどう変わる?

これまで見てきたように、馬の速さは距離によって大きく意味合いが変わります。短距離と長距離では、求められる能力が全く異なるのです。

スプリンター(短距離)とステイヤー(長距離)

人間でも100m走の選手とマラソン選手で体型や筋肉の質が違うように、馬も距離適性によってタイプが分かれます。

  • スプリンター(短距離馬)
    1000m〜1400mを得意とするタイプ。瞬発力に優れる「速筋」が発達しており、ロケットスタートから一気にトップスピードに乗る能力が求められます。カルストンライトオがこの典型です。
  • ステイヤー(長距離馬)
    2400m以上の距離を得意とするタイプ。持久力に優れる「遅筋」が発達しており、一定のペースを長く維持する能力や、レース終盤で再び加速するスタミナが重要になります。

長距離レースでは、いかに体力を温存し、勝負どころで最高のパフォーマンスを発揮できるかという「ペース配分」が勝敗を分けます。時速60kmで走り続ける中でも、騎手は巧みにペースをコントロールし、馬の能力を最大限に引き出しているのです。

したがって、馬の速度は長距離になると単純なトップスピードだけでなく、スタミナやペース配分といった要素が複雑に絡み合ってくる、と言えます。

結論:競走馬の時速何キロという疑問の答え

この記事では、競走馬の速度に関する様々な疑問について解説してきました。最後に、要点をリスト形式でまとめます。

  • 一般的な馬の走行速度は時速20kmから30km程度
  • 競走馬(サラブレッド)はレース中に平均時速60km前後で走る
  • 競走馬のトップスピードは時速70kmを超えることもある
  • 馬の最高速度のギネス世界記録は時速70.76km
  • 短距離専門のアメリカンクォーターホースは時速88kmに達するとも言われる
  • 競走馬の速さの秘密は品種改良とスピードに特化した身体構造にある
  • 全力疾走は身体への負担が大きく骨折や心不全、肺出血のリスクを伴う
  • 「最速」の定義は距離や指標によって異なる
  • アーモンドアイは芝2400mの世界レコード2分20秒6を記録
  • カルストンライトオは瞬間最高速度の指標となる1ハロン9.6秒を記録
  • サイレンススズカは異次元のハイペースを持続する能力に秀でていた
  • ディープインパクトの速さはレース終盤の爆発的な瞬発力にあった
  • 馬の速さは距離適性によってタイプが分かれる
  • 長距離レースではトップスピードだけでなくペース配分やスタミナが重要になる
  • 競走馬の速さは単なる数字だけでなくその馬の個性やドラマと共にある
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